「定時に帰れない」「持ち帰り仕事が当たり前」「心がすり減っていく」——そんな日々に疲弊していませんか?
文部科学省が実施した令和4年度の教員勤務実態調査によると、小学校教諭の平日の平均在校時間は10時間45分、中学校教諭は11時間1分にのぼります。これは月の平均残業時間にすると80時間前後にもなり、過労死ラインを超える過酷な労働環境と言えます。
それにもかかわらず、教師は子どもたちの前では笑顔を絶やさず、放課後には会議や書類業務、持ち帰り仕事と向き合っています。疲れが取れないまま朝を迎える——そんな悪循環が多くの先生たちの現実です。
働き方改革が叫ばれて久しいですが、現場ではなかなか進まないのが実情です。制度的な改革が必要なのはもちろんですが、まずは「今の自分から始められること」が改革の第一歩です。
この記事では、小学校教諭3年目の山本さくら先生と先輩のS先生とのやりとりを交えながら、実際に現場で取り入れやすい「5つの小さな見直し」をご紹介します。
どれも大きな道具や予算を必要とせず、今日から取り入れられる小さな工夫ばかりです。

最近忙しすぎて…もう限界かもって思っちゃって



わかるよ。でもね、ちょっとした見直しで、ずいぶんラクになるんだよ
「やらないことリスト」をつくる
教師は「全部をちゃんとやらなきゃ」と抱え込みがちですが、その完璧主義が長時間労働を招く原因にもなっています。



“やることリスト”より、“やらないことリスト”を作ってみるといいよ
たとえば、掲示物の更新の頻度を減らす、配布物を一部デジタル化する、会議や打ち合わせの代わりにTeamsなどのツールで交流するなど、「実はやらなくても支障がないこと」は意外とあります。
自分のこだわりや慣習を見直し、「手放していい業務」を明確にすることで、時間と心の余裕が生まれます。
教師は真面目な人が多く、「全部やろう」「ちゃんとやろう」と頑張りすぎてしまいがちです。
まずは、「やることリスト」ではなく、「やらないことリスト」を作成し、業務の優先順位を明確にしましょう。
文部科学省も、業務の精選と合理化を進めることの重要性を指摘しています。


職員室外に「集中できる場所」を確保する
職員室は電話や会話などで気が散りがち。集中が必要な業務は、静かな場所で行う工夫が効果的です。
さくら先生も、ある日こんな悩みを打ち明けました。



職員室だと、集中しようと思っても話しかけられてばかりで…



勤務時間内で、教室や図書室など、集中できる“ひとり時間”を意識的につくると良いですね。
「今だけ集中タイム中」と書いた札を使うだけでも、まわりの理解が得られやすくなります。
1日15分でも「誰にも話しかけられない時間」があるだけで、仕事の効率が大きく変わります。
職員室では、電話対応や同僚との会話などで集中力が削がれることがあります。
話しかけられたり、相談を受けたり、気がつくと1時間経っていたということも珍しくありません。


ICTやテンプレートで効率化する
通知表の所見、学年通信、日誌など、定型的な業務はテンプレートとICTを活用することで、労力が一気に減ります。



通知表のコメント、テンプレートやAIを使えば3分の1の時間でできるよ
最近ではChatGPTなどのAIを活用して、所見文例や案内文の下書きを作る先生も増えてきました。
テンプレ共有フォルダやAIツールを活用するだけで、夜遅くまでの作業を減らすことが可能です。
文部科学省もGIGAスクール構想の一環でICT活用を推進しており、働き方改革に直結する領域として注目されています。
成績処理や学年通信、指導案の作成など、定型的な業務にはテンプレートを活用することで、作業時間を大幅に短縮できます。
たとえば、指導案の基本フォーマット、児童評価コメントのストック、保護者宛プリントのテンプレートなど、学校全体や学年内で共有できるとさらに効率化が進みます。


「5分ルール」でルーティンを軽くする
日誌記入、清掃指導、教材準備など、毎日やることの多くは「なんとなく時間をかけている」ことも。



僕はこっそり一人で「5分で終わらせるチャレンジ」を業務に取り組んでるよ。



ゲーム感覚でやれば、集中力も上がりそうですね!
時間を決めることで、判断が速くなり、作業にメリハリがつきます。 「とりあえずやる→いつのまにか長引く」の悪循環から抜け出すヒントになります。
毎日行う業務の中には、実は「長くやってしまっているだけ」のものもあります。
例えば、同学年との打ち合わせ、宿題の提出確認、WEBでのリサーチなどは、意識的に「5分で終わらせる」と決めて取り組むことで、だらだらと時間がかかることを防げます。
時間を決めると「考えすぎず動ける」「優先順位が明確になる」「パターン化してラクになる」といった副次的な効果もあります。
「5分で○○を終わらせるチャレンジ」など、自分のルールをゲーム感覚で作るのもおすすめです。


「ありがとう」で始まるチーム作り



最後に大切なのが、「ひとりで抱えない」こと。
働き方改革は、チームでやるものだよ。
共有フォルダに教材やテンプレをアップしたり、学年だよりや行事指導を交代制で業務を分担したりするだけでも負担は軽減されます。
まずは「ありがとう」「使ってください」と声をかけるところから。
「助けてもらえる関係」は、日頃のちょっとした一言から生まれます。
働き方改革は一人で完結するものではありません。
チームとしての意識を持つことが、負担の軽減にもつながります。
例えば、「○○の業務は交代制にする」「学年通信は共同編集」「共有フォルダに教材や文例をためていく」など、協力体制を築くことで、無理なく仕事の質を維持できます。
また、日頃から「ありがとう」「お疲れさま」の一言を大切にすることで、助け合える空気が自然に育っていきます。


おわりに:働き方改革は「生き方改革」につながる



今日のお話で、明日から変えられることがたくさん見つかりました。小さなことでも、やってみます。
「大きな変化を起こす」のではなく、「小さな改善を積み重ねる」ことが、教師にとって無理のない働き方改革につながります。ご紹介した5つの見直しの中で、「これならできそう」と思ったものを、ぜひ1つだけでも実践してみてください。
時間の余白ができると、子どもと向き合う余裕や自分の心の安定が生まれます。
やりがいや幸福感を取り戻すことが、働き方改革の真の目的です。
「教師の幸せ」から考える働き方改革を意識し、まずはできることから始めてみましょう。
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参考資料:
- 文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)集計(確定値)」 https://www.mext.go.jp/content/20240404-mxt_zaimu01-100003067-2.pdf
- 文部科学省「学校における働き方改革について」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/hatarakikata/index.htm