教師が発信する意味

教師が授業や教材、教育実践で得た経験を発信する意味について考える記事

教師は、毎日たくさんの経験をしています。

授業をつくる。
教材を研究する。
子どもへの声のかけ方を考える。
学級で起きた問題に悩む。
うまくいかなければ、方法を変えてみる。

そうした試行錯誤を繰り返しながら、一人ひとりの教師の中に、少しずつ知識や技術、経験が蓄積されていきます。

一つの授業をつくるために、何冊も本を読むこともあります。
何時間も教材研究をすることもあります。

実際に授業をしてみて、「ここはうまくいった。」「ここは変えた方がいい。」と修正を重ねることもあります。

そうやって時間をかけて身につけてきたものは、その教師にとって大切な財産です。

だからこそ、私は以前から思っていることがあります。

その知識や経験が、その先生の教室だけ、その学校だけで終わってしまうのは、非常にもったいない。

教師が発信することには、そこに一つの大きな意味があると思っています。


目次

一人の教師がつくったものを、一人で終わらせない

例えば、一人の教師が時間をかけて、一つの授業をつくったとします。

  • 教材を調べる。
  • 発問を考える。
  • ワークシートをつくる。
  • 実際に授業をする。
  • 子どもの反応を見ながら修正する。

そこには、かなりの時間と労力が使われています。

もちろん、その授業によって目の前の子どもたちが成長したのであれば、それだけでも十分に価値があります。

でも、その実践を発信したらどうでしょう。

  • 授業の流れを残す。
  • 使った教材を紹介する。
  • どんな発問をしたのかを書く。
  • うまくいったことだけでなく、失敗したことも残す。

すると、それを読んだ別の先生が、

「この方法を、自分の教室でも試してみよう。」

と思うかもしれません。

一人の教師が時間をかけて生み出した知恵が、別の教室でも生かされます。

さらに、その先生が実践して、

「自分の学級では、ここを変えたらうまくいった。」

と発信すれば、その知恵はさらに更新されていきます。

一人の教師の経験が、別の教師の実践につながっていく。

発信には、そんな可能性があります。

教育には、まだ共有されていない知恵がたくさんある

日本中の学校では、今日もたくさんの先生が試行錯誤しています。

きっと、素晴らしい授業もたくさん行われています。
子どもへの素晴らしい関わりもあります。
仕事を少し楽にする小さな工夫もあります。

でも、その多くは外から見えません。

同じ学校で働いていても、隣の教室でどんな実践が行われているのか、意外と知らないものです。

学校が違えば、なおさらです。

そして、その先生が異動したり、退職したりすれば、その知恵や経験の一部は、そのまま消えてしまうこともあります。

私は、それがとてももったいないと思っています。

一人の教師が、何年もかけて身につけてきた知恵。
失敗しながら見つけた工夫。
時間をかけてつくった教材。

それらは、

その人の中だけで消えていく必要はありません。

文章でもいい。
SNSでもいい。
音声でもいい。
動画でもいい。
本でもいい。

何らかの形で外に残しておけば、次の誰かがそこから学ぶことができます。

発信は、目立つためだけのものではない

「発信」という言葉を聞くと、

SNSでフォロワーを増やす。
有名になる。
自分を売り込む。

そんなイメージを持つ人もいるかもしれません。

でも、私が考える教師の発信は、もっと小さなものです。

  • 今日の授業でうまくいったことを書く。
  • 失敗から気づいたことを残す。
  • 仕事を少し楽にできた工夫を紹介する。
  • 読んだ本から考えたことを書く。
  • 自分なりの教育観を言葉にする。

それだけでも、十分に発信です。

何万人もの人に届ける必要はありません。

たった一人でも、

「これ、明日の授業でやってみよう。」

と思ってくれる先生がいたら、その実践は自分の教室を越えたことになります。

発信すると、自分の実践も深まる

そして、発信は誰かのためだけにするものでもありません。

私は発信を続ける中で、

人に伝えようとすることで、自分自身が一番学ぶ

と感じています。

例えば、授業について書こうとすると、

「なぜ、この発問をしたのだろう。」

と考えます。

仕事術について書こうとすると、

「なぜ、自分はこの方法を続けているのだろう。」

と考えます。

普段は感覚的にやっていることでも、人に説明しようとすると、言葉にしなければなりません。

すると、

なんとなくやっていた実践の中から、自分なりの考え方が見えてきます。

発信は、

誰かに教えるための行為であると同時に、

自分の実践を振り返り、意味づける行為

でもあるのだと思います。

自分にとっての「当たり前」が、誰かの役に立つ

発信をするとき、

「自分には、人に教えられるようなことなんてない。」

と思うことがあります。

でも、自分にとって当たり前になっていることが、他の誰かにとっては当たり前ではないことがあります。

教師の悩みは、学校が違っても似ています。

  • 授業がうまくいかない。
  • 仕事が終わらない。
  • 学級経営に悩む。
  • ICTの使い方が分からない。
  • 教材研究の時間が取れない。

自分が以前悩んでいて、今は少しできるようになったこと。

そこには、同じ場所で悩んでいる人に渡せるものがあります。

大きな理論でなくてもいい。
画期的な実践でなくてもいい。

自分が少し先に経験したことを、次の誰かに渡す。

それも、教師が発信する意味の一つだと思います。

学校の外に出ることで、自分の経験の価値に気づく

教師が普段していることには、学校の外でも使えるものがたくさんあります。

  • 複雑なことを分かりやすく説明する。
  • 相手に合わせて伝え方を変える。
  • 文章を書く。
  • 資料をつくる。
  • 人前で話す。
  • 場を運営する。
  • 計画を立てる。
  • 子どもの反応を見ながら、その場で方法を修正する。

教師にとっては日常的なことなので、自分では特別な能力だと思っていないこともあります。

でも、学校の外へ発信すると、

「教師の経験って、こんなところでも役に立つんだ。」

と気づくことがあります。

発信することは、

自分が積み重ねてきた経験の価値を、もう一度見つけ直すこと

でもあります。

発信すると、学校の外にも人とのつながりができる

教師として働いていると、人間関係の多くが学校の中に集まりやすくなります。

でも、発信をすると、学校の外にもつながりが生まれます。

別の地域の先生。
違う年代の先生。
自分とは違う実践をしている先生。
教育以外の仕事をしている人。

普段なら出会わなかった人と、発信を通して出会うことがあります。

そして、

「そんな考え方もあるのか。」

「自分の学校では当たり前だけど、他では違うんだ。」

と気づく。

自分が発信するだけではなく、相手からも学ぶ。

そんな循環が生まれます。

完成した人だけが発信するわけではない

「もっと実績ができてから。」
「もっと詳しくなってから。」
「人に教えられるレベルになってから。」

そう考えると、なかなか発信できません。

でも、発信するのは完成した人だけではありません。

今まさに試していること。
悩んでいること。
考えていること。
失敗したこと。

そこにも価値があります。

「これが正解です。」

と言わなくてもいい。

「今は、こう考えています。」
「こんな方法を試してみました。」
「やってみたけれど、ここはうまくいきませんでした。」

そんな現在進行形の発信だからこそ、伝わることもあります。

もちろん、教師だからこそ守るべきものもある

一方で、教師は何でも発信していいわけではありません。

  • 子どもの個人情報。
  • 保護者に関する情報。
  • 学校内部の情報。
  • 職務上知り得たこと。

教師という仕事だからこそ、慎重に扱わなければならないものがあります。

自分の発信によって、誰かが特定されたり、傷ついたりすることがあってはいけません。

だから私は、

  • 個人が分からないようにする。
  • 学校が特定される情報を出さない。
  • 具体的な出来事を、そのまま書くのではなく一般化する。

そうした配慮は必要だと思っています。

発信する自由と、
教師として守るべき責任。

その両方を考えながら発信する必要があります。

教師の発信が、教育の知恵を蓄積していく

教師は、多くの人から学びながら成長していきます。

本を読む。
研修を受ける。
先輩教師から教えてもらう。
他の先生の授業を見る。
SNSや動画から学ぶ。

そうやって受け取ったものを、自分の教室で試していく。

そして今度は、

自分が経験したことを、誰かへ返していく。

学ぶ。
実践する。
考える。
発信する。

それを見た誰かが、また実践する。

私は、この循環がとても大切だと思っています。

一人の先生が発信したからといって、日本の教育が大きく変わるわけではありません。

でも、

一人の教師が自分の知恵を残す。
別の教師がそれを使う。
そこから新しい実践が生まれる。
そして、その人もまた知恵を残す。

そんな小さな循環が増えていけば、

日本中の教室で生まれている知恵が、少しずつ共有され、蓄積されていく。

それは、日本の教育全体をより良くしていくことにもつながるのではないかと思っています。

教師一人ひとりの経験を、教育全体の財産へ

教師が発信することは、自分を売ることだけではありません。

有名になるためだけでもありません。

自分が時間をかけて得た知恵を、自分一人の中で終わらせないこと。

一つの教室だけで終わらせないこと。

一つの学校だけで終わらせないこと。

そして、

一人の教師の経験を、次の誰かが使える形で残すこと。

そんな先生が少しずつ増えていけば、日本中の学校で生まれている知恵が、少しずつつながっていきます。

教師一人ひとりが積み重ねてきたものは、その人だけのものとして消えていく必要はありません。

教師一人ひとりの経験を、教育全体の財産へ。

私は、そこにも教師が発信する意味があると思っています。


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