本を読むことは、教師にとって大切な学びの一つです。
私自身、若い頃からたくさんの教育書を読んできました。
授業づくり。学級経営。仕事術。
本から学んだことを、実際の学校現場で何度も試してきました。
その経験を振り返って思うことがあります。
それは、本を読んだだけでは、本当に分かったことにはならない。
ということです。
「なるほど。」
「これは使えそうだ。」
と思っても、それはまだ知識として知った段階です。
実際にやってみる。
うまくいく。
うまくいかない。
なぜそうなったのかを考える。
そこまでやって初めて、誰かから学んだ知識が、少しずつ自分のものになっていくのだと思います。
「知っている」と「できる」は違う
本を読むと、「分かった」という感覚を持つことがあります。
授業の本を読めば、授業が少し上手になったような気がする。
仕事術の本を読めば、仕事の進め方が分かったような気がする。
もちろん、「知る」ことは大切です。
知らなければ、そもそも選択肢を持つことができません。
でも、
知っていることと、できることは違います。
例えば、教育書で優れた授業実践を読んだとします。
「この発問は面白い。」
「この指示なら、子どもが動きそうだ。」
そう思っても、実際の教室で同じようにできるとは限りません。
だから私は、教育書を読んで「これは使えそうだ」と思ったら、
まず一つ、実際に試してみる。
それが大切だと思っています。
教育書に書かれた通りにやっても、うまくいかない
教育書の中には、かなり具体的な実践が書かれているものがあります。
授業の展開。
教師の発問。
子どもへの指示。
板書。
教材。
若い頃の私は、そうした具体的な教育技術から多くのことを学びました。
そして、本に書かれていた発問や指示を、そのまま教室で試したことも何度もあります。
うまくいくこともありました。
一方で、
「本に書いてあった通りにやったのに、なぜかうまくいかない。」
ということもありました。
でも今振り返ると、その「うまくいかなかった経験」にも大きな意味があったと思っています。
本には書き切れないものがある
例えば、教育書に、「ここで、○○と発問する。」と書かれていたとします。
では、同じ言葉で発問すれば、同じ授業になるでしょうか。
実際には、そんなに単純ではありません。
- 発問したあと、すぐに答えさせるのか。
- 少し黙って考える時間を取るのか。
- ノートに自分の考えを書かせるのか。
- ワークシートを使うのか。
- ペアで話し合わせるのか。
- その後、誰を指名するのか。
- 出てきた意見をどう扱うのか。
一つの発問の前後には、たくさんの教師の判断があります。
さらに、その発問に至るまでに、
- どんな授業をしてきたのか。
- 子どもたちがどこまで理解しているのか。
- 普段から自分の考えを書く習慣があるのか。
- 友達の意見を聞く学級文化ができているのか。
そうした背景もあります。
本によっては、そこまで細かく書かれているものもあります。
しかし、授業で起きていることのすべてを文章にすることはできません。
つまり、本に書かれている実践の背景には、
文字としては見えない、たくさんの技術や条件がある。
ということです。
やってみるから、「見えないもの」が見えてくる
だから、
「本の通りにやったのに、うまくいかなかった。」
で終わらせるのは、もったいないと思います。
むしろ、そこからが学びです。
なぜ、うまくいかなかったのだろう。
- 考える時間が短かったのかもしれない。
- いきなり発表させるのではなく、先にノートへ書かせた方がよかったのかもしれない。
- この発問をする前に、もう一つ押さえておくべきことがあったのかもしれない。
- 自分の学級では、ペアで話し合わせた方が考えが深まったかもしれない。
そうやって考えていくと、最初に本を読んだときには見えていなかったものが見えてきます。
すると今度は、
「発問について、もう少し学んでみよう。」
「子どもの思考をどうつなげればいいのだろう。」
「この授業をした別の先生の実践も読んでみたい。」
と、新しい問いが生まれます。
つまり、
読む → 試す → 問いが生まれる → また学ぶ
という循環が始まります。
うまくいったときにも、学びがある
逆に、本に書かれていた実践を試して、
「今日はすごくうまくいった。」
ということもあります。
それはうれしいことです。
でも、そこで、
「この発問は使える。」
だけで終わらせない。
なぜ、うまくいったのだろう。
と考えてみる。
- 発問そのものがよかったのか。
- 発問前の指示がよかったのか。
- 先にノートへ書かせたからなのか。
- それまでの学習の積み重ねがあったからなのか。
- 子どもたちの実態に合っていたからなのか。
そうやって考えることで、
「この発問をすればうまくいく。」
という表面的な理解から、
「こういう条件があると、この発問が機能するのではないか。」
という一段深い理解に変わります。
うまくいったことも、
うまくいかなかったことも、
実践したからこそ得られる学びです。
誰かの実践を、自分の技術に変えていく
教育書に書かれているのは、基本的には誰かの実践です。
それを読んだ段階では、「この先生は、こうしている。」という知識です。
でも、自分の教室で試してみる。
- うまくいく。
- うまくいかない。
- 理由を考える。
- 自分の学級に合わせて少し変える。
- もう一度試してみる。
この過程を通ることで、
誰かの実践が、少しずつ自分の技術になっていきます。
私は、教師にとっての読書には、この過程がとても大切だと思っています。
一冊から、一つ試せばいい
とはいえ、本に書かれていることを全部実践する必要はありません。
一冊の教育書には、たくさんの実践や考え方が紹介されています。
10個も20個も、「これをやってみたい。」と思うことがあります。
でも、それを全部やろうとすると大変です。
だから私は、
一冊から一つでもいい。
と思っています。
「これは面白い。」と思った発問を一つ使ってみる。
仕事術の本なら、仕事のやり方を一つ変えてみる。
読書を、
「読む」で終わらせず、「一つ試す」まで進める。
それだけでも、本との付き合い方は変わります。
読書メモをつくることが目的ではない
読書の学びを残す方法もたくさんあります。
- 本に線を引く。
- 付箋を貼る。
- ノートにまとめる。
- デジタルツールに保存する。
- AIに整理してもらう。
どれも便利です。
私自身も、さまざまな方法で学んだことを残してきました。
ただ、気をつけたいことがあります。
それは、
整理すること自体を目的にしないこと。
です。
- きれいな読書ノートをつくった。
- たくさんの引用を保存した。
- AIできれいに要約した。
それだけで満足してしまうことがあります。
極端に言えば、
本に100本線を引いて何も変わらないより、
一つだけ試して、授業が少し変わった方がいい。
私はそう思っています。
教師には、学んだことを試せる場所がある
教師の読書には、大きな強みがあります。
それは、
毎日の仕事そのものが、学びを試せる場所になっていることです。
- 授業について読んだら、授業で試せる。
- 学級経営について学んだら、教室で試せる。
- 仕事術について学んだら、翌日の仕事で試せる。
- AIについて学んだら、教材づくりで使ってみることができる。
そして、子どもの反応や自分自身の変化を見ることができます。
- 読む。
- 試す。
- 振り返る。
- また読む。
- 少し変えて、もう一度試す。
この往復ができることは、教師という仕事の面白さの一つだと思います。
実践したあとに読むと、本が違って見える
一度実践してから、もう一度同じ本を読むと、
以前とは違って見えることがあります。
最初は何とも思わなかった一文が、
「そういう意味だったのか。」
と分かる。
以前は読み飛ばしていた部分が、急に重要に思える。
これは、自分の経験が増えたからです。
同じ文章でも、
読む側が変われば、見えるものが変わります。
だから読書は、
読む → 実践する
という一方通行ではありません。
読む → 実践する → また読む。
経験が読書を深め、
読書が次の実践を変えていく。
そんな往復なのだと思います。
AI時代だからこそ、「実践すること」の価値が高くなる
今は、本から知識を得る方法も大きく変わりました。
AIに聞けば、本に出てくる概念を説明してもらえます。
分からない言葉を質問することもできます。
情報を整理したり、要約したりすることもできます。
知識を得ること自体は、以前よりずっと簡単になりました。
だからこそ、
「知っている」だけではなく、「自分はどう使ったのか」
が、より大切になっていくと思っています。
- 実際にやってみて、どうだったのか。
- 何がうまくいかなかったのか。
- そこから何を考えたのか。
- 自分なら、どう変えるのか。
こうしたことは、自分で実践しなければ得られません。
AI時代の読書も、
知識を集めるだけではなく、
自分の経験と結びつけることで価値が生まれる
のだと思います。
読書は、答えだけでなく「問い」をくれる
前の記事では、「学びの飽和点」について書きました。
たくさん本を読んでいると、
「どの本も、だいたい同じことを言っているな。」
と感じる時期があります。
そこまで学んだら、
次の本、次の本とインプットを増やし続けるだけではなく、
一度、自分の現場で使ってみる。
すると、
読んでいるだけでは見えなかった疑問が生まれます。
- なぜ、うまくいかなかったのだろう。
- なぜ、この方法はうまくいったのだろう。
- 自分の教室なら、どう変えればいいのだろう。
そして、その問いを持って、また本を読む。
そうすると、次の読書は最初の読書とは違うものになります。
読書は、答えを教えてもらうためだけのものではありません。
実践することで、新しい問いを見つけるためのものでもある。
一冊から、一つでいい。
- 読んだことを試してみる。
- そこから考える。
- そして、また学ぶ。
その繰り返しによって、
本に書かれていた誰かの知識が、
少しずつ、
自分自身だけの技・知恵に変わっていく。
そう、私は読書をそのように考えています。
教師の仕事を、もっとシンプルに。
毎日の仕事に追われ、
「もっと余裕を持って働きたい。」
そう感じたことはありませんか?
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